日本財団 図書館


 

4)生化学的変化の計測

 

a)動揺暴露前後の採血、採尿
動揺暴露実験前後に実施された採血、採尿の詳細は以下の通りである。採取される血液の量は午前中の実験の場合20?/回、即ち、実験の前後で合計40?採血を行った。また、データの分析に必要となる比較の対照者(Control)として、動揺に暴露されない協力者に対しても同様の採血を行った。採取された血液は、分析の目的、方法によって保存方法が異なる。通常の健康診断と同様の分析は、医療法人聖樹会総合健診センター(武貞昌志委員)において行われた。このための血液として、8?と2?に分け、8?の血液に関しては、採血から30分後に10分間、遠心分離器(3000rpm)にかけた。残りの2?に関しては凝固防止のヘパリンを塗布した試験管で保存した。これらの血液は、冷蔵庫において保存され、被験者数人分の血液が確保された段階で聖樹会総合健診センターに運ばれた。
大阪大学医学部環境医学教室(森本兼嚢教授)において行われる、遺伝的健康度の変化の分析のためには、採血後できるだけ早く、しかも体温状態で保存された血液を用いることが要求される。また、分析には数時間を要するため、午後の実験において採取された血液では当日の分析に困難をきたす。そこで、午前中に行われる実験時の血液のみが対照被験者の血液とともに、実験終了後直に大阪大学医学部環境医学教室へ運ばれた。
一方、午後の実験の場合には、被験者血液の生化学的変化の分析のみを実施するため、採血量は10?とした。
また、同時に採取された被験者の尿は聖樹会総合健診センターにおいて分析された。尿の分析結果からは特に異常な変化は認められなかった。
以上のように、検査内容による分析方法の違いのため、動揺暴露実験の被験者数は総数71名(動揺暴露被験者:61名、対照被験者:10名)であった。

 

b)動揺暴露に基づく生化学的変化の分析結果
聖樹会総合健診センターにおいて行われた分析の結果は、酔いの発症との関係を調べるために、生化学的変化を抽出し、医学的見地からの詳しい考察を行った。
動揺暴露実験の前後で、血液成分に起こる変化を図2.2.3−6に示す。図中の横軸は被験者の愁訴による酔いの程度(1〜7段階)を表す。縦軸は、カテコールアミンを除いて全て無次元化表示としてある。無次元値は、各血液成分について{(動揺暴露後の値一動揺暴露前の値)/平常時の値}を表している。動揺暴露実験時の採血と平常時の採血は一定の期間をおいて行われたものではない。従って、ここで行った無次元化が必ずしも適切ではない可能性はある。また、●印は嘔吐した被験者のデータである。
この結果から、動揺暴露によって人体の生理的な変化が起こり、しかも酔いの程度によって変化に違いのあることがわかる。特に、ホルモンの動態に関しては、アドレナリン、ノルアドレナリンともに増加の傾向が見られる。これらの神経伝達物質は、不安、恐怖、怒り等の情動に関与するこ.とから、酔いの過程における心理的変化とも関係していると考えられる。
更に詳しい検討のために、血液成分の変化と酔いの程度の相関関係を求めると、表2.2.3−9および図2.2−3−7を得る。表中においては、乗り物酔いの発症者と、非発症者の相違点を明確にするため、酔いの程度1−2を非発症者、酔いの程度5−7を酔いの発症者とした。また、嘔吐者に関する結果をも

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION